京都大学では、「教科に関する科目」と「教職に関する科目」について必要な単位を修得することによって、中学校・高等学校の教育職員免許状(一種免許状・専修免許状)を取得することできます。ここでは、京都大学における教員養成の特色について、ご紹介します。
図.教職の高度化(イメージ)
京都大学は、研究型総合大学としての特質を活かし、「学問する」教師の育成を目指しています。 学問と教育、理論と実践の間には、ズレがあることも事実です。教師には、異なる文化の狭間で思考し、異文化間を行き来する力量が求められていると言えるでしょう。
たとえば、カリキュラム・デザインや教材開発の力量形成を通して、長期的な見通しの中で授業を構想する視点を得ることにより、「適応的熟達者」としての教師に成長してほしい。また、実践経験を分析・一般化して、教師自身の言葉と論理(「現場の教育学」)を創ったり再構成したりする力を高めることで、問題把握の枠組み自体も問い直しつつ、より広い視野に立って問題解決に当たっていく「問題探究的省察」の力を身につけてほしい。その基盤として、教科専門と教育学、両方の学問的素養が必要だと考えています。
京都大学の教職課程に関する教育活動は、基本的に全学の教職教育委員会の責任において行われています。教育学研究科・教育学部は、教職課程の実際の運用(教職科目の企画・提供、教育実習・介護等体験などの受付や指導)を担当しています。
京都大学の教育学研究科は教育学研究と研究者養成を主たる目的として設立されたという特徴がありますが、引き続き各部局・関係機関との連携を図りつつ教職課程にかかわる教育活動の充実を図りたいと考えています。
教師としての力量を高めるためには、教職課程以外の科目での学習や自分のテーマに即した研究を進める、あるいは課外活動等で各種の技を磨く、リーダーシップを発揮するといった経験も、大きな意義を持つものです。
学校現場の実情を知ったり、直接、生徒と関わったりする機会としては、教育実習以外にも、①学校の公開研究会に参加する、②学生ボランティアとして活動する、③教育学研究科や教育委員会等が提供する各種セミナーを受講する、などがあります。
教師を目指す学生には、様々な学習機会を活用しつつ、主体的に力量形成を図ることが期待されています。
教師力アップ・ゼミナール
E.FORUM全国スクールリーダー育成研修
教職課程を履修する学生(平成22年度以降学部入学者)には、教職課程ポートフォリオの作成と活用を求めています。教職課程ポートフォリオとは、「教師に求められる力量」の5つの柱に即して成果資料を整理するファイルです。
「履修カルテ(自己評価用チェックリスト)」に示した「目標到達の確認指標」については、ポートフォリオのセクションの扉にて「対応する科目」を明示し、それぞれの科目での到達を求めています。また「履修カルテ(自己評価用ルーブリック)」については、それぞれの柱で必須の成果資料を指定し、教職実践演習までに確実に合格レベルに到達できるような取り組みを促しています。
さらに教職課程ポートフォリオ検討会を開催し、教員から助言するとともに、先輩と後輩との間の交流を促進しています。教職課程ポートフォリオは、個々の学生が自らの力量形成のストーリーを紡ぎだすツールとなるだけでなく、学生間の交流を活性化するものともなっています。
※詳細については、西岡加名恵・石井英真・川地亜弥子・北原琢也『教職実践演習ワークブック』(ミネルヴァ書房、2013年)をご参照ください。
教職課程ポートフォリオ
教職課程ポートフォリオ検討会の様子
京都大学では、教育職員免許状(一種免許状)の取得をめざす学生のために、次の4種類の「履修カルテ」を用意しています。「履修カルテ」とは、教育職員免許状取得時に求められる力量などを整理したものであり、教職課程を履修する上での指針となるものです。
※詳細については、西岡加名恵・石井英真・川地亜弥子・北原琢也『教職実践演習ワークブック』(ミネルヴァ書房、2013年)をご参照ください。
図.「教師に求められる力量」の5つの柱